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円相 (黒陶)シリーズ 2007〜

環相「宙」                                      神戸ビエンナーレ 審査員特別賞 受賞

川上力三展

藤 慶之(美術ジャーナリスト)

   
 2007年神戸ビエンナーレで、京都在住の陶彫作家・川上力三が、特別賞に輝いた。受賞作

「環相(宙)」は、近年この作家が追求してきたテーマ。

 見方によっては、黒いゴムタイヤか?と思われがちな工業製品ふうの冷たさと、手づくり陶彫

ならではの激しいぬくもりが環状形の中でせめぎ合っているのだ。このせめぎ合い。単なる造形上

の二面性というより、作者自身の胸中に今なお燃え続ける作陶半世紀の多面性ではあるまいか。

その証拠に、この作家の足どりをたどる時、その変貌の跡の激しさを感じるのだ。「走泥社」時代

から好んであらわれていた現代社会風刺の姿勢、だまし造形ふうのものから虚無感漂う造形物・・・。

そして、韓国の古寺で体得した一種の霊感が生み出した「門」シリーズ。

 考えてみれば環も門も、そこを通り抜けようとすれば、非日常的境地さえ要求されよう。形態こそ

違え、両者にはまさに「宙」への道が待ち構えているのか。

 今回の個展では「環」シリーズの展開ともいうべき、やや複雑化した陶彫をはじめ、花のうつわ展

も同時開催。70歳の大台を過ぎた構えの無さが、にじみ出ていた。
   

「陶説」より 2008.4 掲載

京都 アートスペース感

   

今回の記事,これが絶筆になりました。心より冥福を祈ります 合掌 川上力三

 

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